ツラの皮
思わずと言ったように飛び出した言葉に雪乃自身がはっとし口を噤む。
握り締められた華奢な指が白さを増す。
「……ゴメンね。でもあの時はどうしようもなかったの。……なんて今更だよね。」
風に散る花びらのように雪乃はスカートを翻し走り去った。
今更、未練も復讐心もない俺にどーしろってんだ。
支度にも身が入らず、気分転換に仕事を切り上げて食事に向かう途中、堪らなくなって携帯電話を取り出した。
『も、もしもし?』
五回目のコールで慌てた様子で相手が電話口に出た。
「俺。悪ぃ。仕事中に―――」
そう言い掛けて電話先で『ロン!』という声に眉を顰める。
「…オマエ、何で平日の真昼間からマージャンなんてやってんだよ。」