ツラの皮
電話先で『はやくしろー』と叫ぶタチバナの声が聞こえ鈴が『うるさいなーもうっ』と小さく舌打ちする。
『じゃ、ゴメン高遠。呼ばれてるからもう行くね。今日は絶好調だからお土産期待していいわよ!』
「……おー」
取らぬタヌキの皮算用、ということわざが頭を掠めたが口に出すのは止めてやった。
アブク銭で買おうとする土産に興味はないが、土産をくれようとする心意気は喜んでやる。
少なくとも土産を用意する相手として認識されてんだろ?
さすがにオマエだってキライな奴に土産なんか用意したりしないよな。
電話を切る直前「あ」と何かを思い出したような声が引き止める。
一拍の間を置いて電話から出てきた言葉は『頑張って』だった。