ツラの皮




「何が。」


『へ?…あ、や、仕事で疲れたのかなって思って。……何かいつもの毒舌に棘がないって言うか…』


一方的に喋ってたのは私だけど…と要領を得ない言い訳をゴモゴモ呟いている。




つまりオマエは言葉少ななやり取りの間に俺に元気がないのを察して、慰めようとしてくれているわけだよな?



痛痒いような痺れに胸が唆される。


つか、何で電話越しだ。


こういう状況を見越してわざと煽ってんのか、毎度毎度。




距離を忌々しく思っているうちに

『じゃ、戻ってきたら連絡して。お土産渡すから』

と早口に言い捨てて電話が一方的に切られた。




随分、潔いじゃねーか。


情緒も未練も感じない相手の態度にむっと口を尖らせるものの、気分は殊の外浮上していた。




帰ったらとりあえず会えるわけだ。


単純にも、いつの間にか浮かれた足取りになっていた俺はふとあることを思い出して首を傾げた。









週末?

タチバナって―――。






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