ツラの皮
スタッフの一人と打ち合わせをしていた監督がタチバナに気付いて、おっ、と眉頭を持ち上げた。
「ハヨザーます。二日間宜しくお願いしやっス。」
監督は腑抜けた挨拶に鷹揚と頷いた後、視線を鈴に向けた。
「君も隅に置けないな。随分若い彼女を作ったものだ。」
さすがは監督。
誰もが面前と言えなかったことをいとも容易く切り出した。
「はは。監督ってば相変わらずオチャメっすねぇー。コレ俺の娘だよ。」
「は、ハジメマシテ。鈴です。状況も知らされず連れてこられて混乱中ですが、ロクデナシの父がいつも多大なご迷惑をお掛けいたしております。スミマセン。」
水を向けられた鈴は有名監督を前に慌てふためいたカンジで挨拶を繰り出した。
って、ホント、オマエ大混乱だな。
えっ、娘!?
つかコドモいたの?
つか、結婚してたの!?
と周囲では驚愕の波が押し寄せていた。
監督も驚いたようだが、その反応は周囲と違って感激混じりだ。