ツラの皮
「ちょ!あ……やだぁ」
再び首筋に喰らいついた俺に震えた声が訴える。
つくづくバカだな。
そんな可愛い反抗じゃ、今の俺には逆効果だっての。
抵抗は申告どおり明日の体裁を考えたものらしく、華奢な体は肌に落とす口付けに小さく震える。
嫌悪されていないことに安堵し、邪魔な腕を押さえて本格的に貪ろうとして、思わぬ横槍が入った。
「鈴さぁん。帰ってきたんでしたら一緒に下のラウンジにでも―――」
突如扉が開け放たれて、すこぶる愛想のよい笑顔のトールが現れた。
「・・・・・・・・」
三者三様の沈黙。
トールは入口付近の情事にきょとんと目を見開いて立ち尽くし、鈴は真っ赤な顔で悲鳴を上げ、俺を突き飛ばして部屋から飛び出していった。