ツラの皮
アチコチグルグル探し回って、一階の娯楽室の脇を通り過ぎようとした時、聞き覚えのある声に足を止めた。
「………てめ。俺から逃げ出しといてやってることがソレかよ。」
入口から中を覗きこみ脱力する。
娯楽室に設置されたジャン卓を囲んでいた鈴は俺を見るなり赤い顔を強張らせて固まった。
「だ、だって……この面子に誘われてお断りするわけにはいかないじゃない…。」
歯切れの悪い言い訳にチラリと視線を巡らせて流石の俺も「ぅ」と怯んだ。
鈴とタチバナはともかく、尾瀬監督をはじめ役者陣でも大御所の野口さんやら諸井さん、高見の見物か後ろの席では同レベルの笹山さんなどがグラス片手に雁首を揃えている。
「そこらでヘンな男に引っ掛けられるよか、ここの方がよっぽど安全勝つ健全だろー?」
素知らぬ顔で嘯くタチバナを睨み付ける。
このヤロウ・・・
据え膳どころか、餌を前に右往左往する俺を見て遊ぶつもりだったな?
さしもの俺でもここから鈴を掻っ攫うことは出来ない。
クソッ、こんなところへ逃げ込むとは卑怯者がっ。