ツラの皮
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午前中の撮影を終え、個々に昼食を取った後。
午後の撮影は射光の関係で三時過ぎの開始だ。
用具のチェックをした後、鈴を探しに山野の散歩道へ足を踏み入れた。
緩い急勾配の坂道が続き、木漏れ日が時折頭上の遥か高みから降り注ぐ。
ところどころに休憩所が設けられていて、開けた場所から思いもかけず遼遠の絶景が臨めた。
「尾瀬監督。」
二つ目の休憩所に尾瀬監督が居て、俺にニコリと笑みを浮かべた。
「君も散歩かな。いやはや私はもう足腰が利かなくてねちょっと休憩だ。もう少しいったところに展望台がある。余力があるなら行ってみるといい。」
そう言って至福の一服を味わうがごときに絶景に目を細めた。