ツラの皮
俺の質問に煙草を咥えた口がニヤリと笑った。
『幾ら虚像っつっても、やっぱ本質に近い方がイイ絵撮れるに決まってんだろー。』
その言葉が、理性で理解しながらも心の奥底に置いたまま見ないフリをし続けた存在を割り切らせた。
それが、ルポ上がりだというそのカメラマンを否が応にも一目置くようになった切欠でもあった。
尤も、尊敬しているのはカメラマンとしての眼と腕であって、その私生活には一切の尊敬も見出せない男だが。
最高の役者を欲した尾瀬監督。
ホンモノを撮る方が楽だとのたまったタチバナ。
言い分はまるで間逆のようでいて、全く同じだ。