ツラの皮



私の動揺を甚振るみたいに部長は目を眇めた。



「会社の取引先との会食がある。個人的にも懇意にしている相手だ。通常の会食よりも多少プライベート混じりになる。そこに随行してもらおう。」



意外な説明に私はぱちりと目を瞬いた。




「……はぁ、つまり私は部長の秘書というか、部下というか助手というかアシスタント的な?」


「仕事の一環だが、私用混じりの会合で、部下を堂々と『仕事』として付き合わせるのは俺も気が引けるからな。」



……嫌味かっ!!

どうせ私は、まるっきりプライベートの(しかも違法の)会合に、仮にも上司を騙して連れていきましたがっ!?






「……ワカリマシタ。」


もとより私に拒否権などナイ。








しかし、契約は仮に口頭だとしてもしっかり確認しとかなきゃいけなかった。


相手がこのキレ者の参謀なら尚更。



部長は確かに『金曜日は…』って言ってたんだ。

『は』って……それはこれが一回で済む話じゃなかったんだって事。






これはドアホ部長の暴虐劇の序曲だった。

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