ツラの皮
ファイブ
≪Side高遠≫
「高遠。怖いよ。」
早朝。
車の運転をする麻生は前を見たまま、歌うように言った。
昨日はどこぞへ泊った麻生が、通りがかりに拾ってくれると言うので同乗させてもらって現場へ向かっている。
「ははは~、鈴ちゃんにフラれたんだぁ~?今日は珍しく映画撮影の後、別の仕事入れて無かったのにねぇ。」
ウ ル サ イ
俺は応えるのも面倒で、ブッチョウ面で前を睨んだまま無言を押し通した。
チクショウ。
なぁにが接待だ。
俺差し置いて、うだつの上がらねぇオッサンと呑んでナニが楽しいか。
オマエも、んなモン偉そうに仕事とか言ってんじゃねぇーよっ。
………………なんてな。
単なるヤツ当たりでぶちかましそうになった言いがかりは、理性で押し留めた。