ツラの皮
くそ。
ヤラレタ。
それから程なくして俺は上役の待つ部屋へ呼ばれた。
「事実無根。でっちあげも甚だしい。」
記事の真相を問う上役等に対し、俺は苛立ちも露わにきっぱりさっぱり言い放った。
雑誌に掲載されていた写真は、この間俺が雪乃をマンションまで送って行った時のモノ。
一応一般人の括りで、俺の顔や名前は伏せられていたワケだが。
【彼との出会いは前作の尾瀬監督の映画での事。
その後、菅原さんに共演の××との恋が噂され、関係は一度消滅したようだが。
今回、尾瀬監督の作品で再会。愛が再加熱したか―――?】
俺が映画スタッフであることや、昔の事まで根掘り葉掘り、ある事ない事書き記されていて、もはや隠匿の余地などありゃしない。
過去の失恋を今更これほど大々的に公表する事になるとは、一体どんな喜劇だ。
いや、それはこの際どうでもいい。
肝心なのは現在のコトだ。
「ナニ考えてんのか知らねーが。俺には今、別にちゃんと彼女がいて、雪乃とは無関係だ。しっかり否定してくれ。」