ツラの皮



「さて、見事婚約は破談になったし、オマエの労をねぎらって飯でも食いに行くか。ナニがイイ―――」


「ラーメン。」




即座に応えた私に部長が眉を顰める。




「オマエ欲がナイな。折角だから寿司とか、なんなら呑みに―――」


「ラーメンがイインです!!!」



部長はふぅと息を吐いて「まぁ、オマエがそれでイイならな。」と歩き出した。



お腹空いてるから何か食べたいけれど、部長に高いモノ奢らせるとかアブナイ。


また何か変な見返りを要求されちゃ堪んないもんね。


それに…


彼氏でもない男とお食事だとか、んなデートみたいな事はやっぱちょっと気遅れするじゃないのよ。








連れてこられたラーメン屋はガード下の小汚い店。


しかし、驚くほどに美味くて、店を出る頃には私のゴキゲンもすっかり治っていた。


こんな店を知っているなんて益々部長って侮れない。



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