ツラの皮
「ち、ちがっ・・・すみま、」
「ひょっとしてわざとかよ。俺に気があるとか。」
はぁ!?
そりゃキレイな貌してるとは思ったけど、思わず見蕩れたけど。
だけど、この男の気を惹く為にしなだれかかったとか、アリエナイし!
ふざけんな、この自意識過剰男!
そう叫んでやろうとした矢先、アナウンスが私の思考の全てを掻っ攫った。
「うっそ!一駅乗り過ごしてるーっ!」
ただでさえ時間ギリギリなのに。
これから家に帰ってシャワー浴びて、服を着替えて、メイク直して・・・間に合う?
・・・間に合わないかもしれない。
ここから先のスケジュールを分刻みで立て替えながら、開け放たれたドアから飛び出した私。
男の存在をすっかり忘れ、人もまばらなプラットホームを全力疾走で駆け抜けた。