ツラの皮
不満げな男に碧樹部長はふっと溜息を吐いた。
「蓼食う虫も好き好き…俺の趣味はほっといてもらおう。ともかく俺はユリカと結婚する気はない。」
「…何でだよ。アイツのコト、好きだったんじゃないのか?ユリカだって……」
「ユリカにしてみても俺は兄みたいな存在だ。好きは好きでも恋愛感情じゃない。」
平然とそう言いきった部長に、男は一瞬痛ましげに顔を顰めて。
胸倉を掴んでいた手を乱暴に放した。
「そーかよっ!!じゃ、勝手にしろ!!…後から、惜しがっても遅いんだからな。」
「ああ。精々惜しがらせてくれよ。」
鼻で笑った部長を男は忌々しげに睨みつけて足音荒く去って行った。
「…部長。」
「なんだ。」
「あの男は誰なんですか?」
「あの男は…幼馴染ってやつだ、な。俺とユリカの―――」