ツラの皮
三人は家が近く、昔からの顔馴染み。
そして…ユリカさんは昔から彼の事が好きだったらしい。
だけど、彼は頑なにユリカさんの気持ちを拒否し続けてきた。
部長とユリカさんの親の取り決めた婚約の話は知っていたし、
ユリカさんには部長が相応しいと頑なに思っていたから。
―――本当は彼もユリカさんを好きだったのに。
片や成績優秀、高学歴からエリートコースの挙句一会社の御曹司で、まぁ、容姿も悪くない。
片や平平凡凡、情に篤く明るい性格だけが取り柄のしがない飲食店の店長(なのだそうだ)。
ブサイクでないけれど、まぁ、平凡な容姿。
そこまで差が歴然としてしまうと足掻くのも相当の覚悟は欲しいだろうけども。
好きだからこそ、彼はユリカさんの幸せを思って身を引いたのだ。
「……彼の気持ちも分からなくはないですけど、でも…。」
「ああ。バカバカしいだろ?俺はとんだアテ馬ってワケだ。」
アテ馬ってか…
本当は何の障害もない両想いのカップルに巻き込まれた…ってか。
私はチラリと部長に目をやった。