ツラの皮
呆れ顔でやれやれと肩を竦めている部長を見たら、小さく笑みが漏れた。
なんだかんだ言いながら彼に発破を掛け、二人が上手くいくように骨を折ったヒト。
一番割に合わない立場でね。
親の持ちかけた結婚話に何食わぬ顔で乗っかってたのも、彼を煽るため。
しかしそれでも彼が動かず、思いもかけず結婚話が早急に進みだしたから、業と破談劇を演じてみせたんだ。
あの日、部長に振られて、それでもユリカさんがホッとした表情をした理由がようやく分かった。
ユリカさんは彼に袖にされて、勧められるままに部長との婚約を承諾していたものの、彼への想いを断ち切れてなかったんだよね。
「そー言う事なら今日巻き込まれた事は許しますヨ、部長!」
「何故オマエは上から目線だ。そもそもは俺を麻雀に誘ったオマエの自業自得だろう。」
ちっ…部長ってばまだ根に持ってんの。
でも…
合理的に利益だけを求めるタイプかと思っていた部長が、意外に薄利多売なお人よし精神を持ち合わせていた…って。
新鮮な発見したし、ね。
……なんて、
単純にも微笑んでいた私は、多分、相当のバカだ。
てか、部長が私の想像を超えたアホだったのだ。