ツラの皮



麻生さんを見た夫人が「あらまぁ」と目を見開く。




「とてもステキな殿方とお知り合いなのね。この方は…?」



「あ、えと……寺山さんと言って、父の仕事関係者で、ですね。」




私の紹介に合わせて麻生さんが夫人に「ハジメマシテ」と軽く微笑む。


夫人はとても素直に「本当にステキな方ねぇ。」と目を細めた。


麻生さんがチラリと私に目配せする。


暗にこの方は?と紹介を迫られて、私はぅぐっと言葉を詰まらせた。


それに気付いた夫人が我に返り、改めてニコリと微笑んだ。





「ご挨拶が遅れて申し訳ゴザイマセン。私は鈴さんの婚約者である宮武碧樹の母でございます。」




爆弾投下っ!!!!




おそるおそるという感じに麻生さんを見上げれば、一瞬虚を突かれたような顔をした麻生さんは




「…へぇ。婚約者、ですか。」





それはそれは黒い笑みで私を見下ろした。





――――――っ。



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