ツラの皮

滲んだ涙が零れないように、ギロッと麻生さんを睨む。



「…何であんな事、言ったんですか。あの俺様バカ、逆上したじゃない。」



話すにしても段取りってモノを考えて言えば、アイツだって……




「筋道立てて、冷静に?話が出来る？鈴ちゃんが?」


「そ、それは……」


「それに、そうしたトコロで高遠は逆上するよ。なんせ俺様気どりの短絡思考なバカだしね。」




…なんか一つ増えてるような気がしないでもないけれど。


麻生さんはふっと笑った。




「鈴ちゃんに説明、ちゃんと出来るとは思えないなぁ。だって、ここに至るまで自分がブチョーのフィアンセだったっていう事態にも気付かなかったんでしょ?どういう経緯でそうなって、それで自分はそうじゃないって思い込めてたのか……」


「それは…っ」





私のセリフを遮るように麻生さんはずいっと笑顔を近づけた。




相変わらず甘やかな笑顔だけど


その目は笑ってナイ。



怒ってる風でもなく…実に冷静で揺るぎない。