ツラの皮




「それにオマエの彼氏とやらも……。知らぬ間に自分の彼女が他の男の婚約者になっていると知ったらどんな顔して見せるか―――想像すると愉快だ。」



くつくつと喉を鳴らす部長に怒りと、同時に悔しさが湧いてぎゅっと拳を握る。


えぇ、えぇ!!

あのバカは、部長の思惑通り、キレましたよっ!!

さぞ、愉快でしょうとも!!



部長の思惑通り踊らされて、喧嘩して……




……私が、鈍感だったせいで。




『何かに、どれかに気付いていればここまでヒドイ事にはならなかったのにね。』



今更麻生さんのセリフが胸に重くのしかかった。


部長の気持ちに気付いていれば…、現状を把握してもっと早くに高遠に打ち明けていれば…
こんな部長のフィアンセなんて立場は回避できたかもしれないのに。





「まぁ、過去の事はとやかく言わないが、俺と結婚する前に男は清算しとけよ。」


「だからっ、部長となんて絶対結婚しませんからっっ!!!」



しゃーしゃーと嘯き会議室を出ようとする背中に、私は腹の底から怒鳴った。




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