ツラの皮
雪乃が俺の座る材木の横にふわっと腰を下ろす。
「高遠は分かり易いな。最近鈴ちゃんと喧嘩したんでしょ?元気ないものね。」
「……雪乃には関係ない。」
「私鈴ちゃんの替わりでイイのにな~。仲直りするまで私が高遠の鈴ちゃんになってあげるよ?」
あけすけなホド無邪気な笑顔を思わず見詰めてしまったのは、そこに鈴を重ねたから。
替わりになってあげると豪語するだけあって、雪乃の演技はハイクオリティーで。
見た目に似ているトコロなど全然ないくせに、どこといわず鈴の面影がチラつく。
決して雪乃に心を惑わされるコトはないが、雪乃の見せる鈴に心がザワメク。
けど――――
「いい加減にしてくれ。アイツはアイツで、雪乃は雪乃だろ。雪乃が幾ら鈴を真似たところで、雪乃は雪乃でしかねぇよ。」
鈴にはなれねぇよ。
俺がホシイのは偽物なんかじゃなく、本物の鈴だ。