ツラの皮
流石麻生。
この鈴から素直な謝罪を引きだすとは、女の扱いに慣れてる。
麻生の言うとおりで―――
怒鳴ったのは何も怒っているからではない。
したくてしたならともかく、一方的にされたものを罵ったって仕方がないと分かっている。
分かってて腹が立つのは―――しょーもない嫉妬だ。
それと自覚していながら鈴にヤツ当たりにぶちまけてるだけだ。
……にしても。
あんの男―――っ。
一度ならず二度までも人の女に手を出すとは。
しかも俺から強奪する気満々に、とんだ罠を仕掛けやがって。
「自分にその気もない女の子、いきなり彼女にして、挙句に婚約者かぁ…さすがブチョー。とんだギャンブラー。」
「万馬券♪」
感心する麻生と、その“万馬券”を握っているかのようにほくそ笑むタチバナと。
俺に至っては心底腹立たしい。