ツラの皮



「なんでだ。」


「なんでっつったって、アガったもんはアガったんだからしゃーねぇだろが。」


「そっちじゃねーよ。何で却下だ。」



睨みつける俺の前でタチバナは煙草を一吸いし、紫煙を空気に放った。




「おめぇに恋人がいるってだけで話がとどまりゃいいが、それが万一『俺の隠し子』って事がばれてみろ。俺まで巻き込まれるわ。」




「…確かに、ですね。隠しているかどうかは別として、未婚の“オヤジ”が立花さんとすると、それはそれでまた別の話題が湧くでしょうねぇ。」




タチバナが有名なカメラマンで。


鈴は、未婚というセンセーショナルな娘で。


それだけが確立した話題だったらともかく、そこに雪乃の話題まで織りこまれればそれなりの話題性になる。



―――だからこそ…





「勘弁しろよ。俺は今更コイツのオヤジ面なんかしたくねぇっての。」
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