ツラの皮




鈴を宥めて既に最終も終わったバス停のベンチに腰を落ち着けた。



「でも俺はオッサンの考えてるコトは分かってんだ…」



あの案については、タチバナから拒否されるか認められるか半々で、ダメ元で賭けてみた。

結果見事に拒否られたわけだけど。



なんで…と訝しげに俺を見詰める鈴。




「アイツにとっちゃカワイイ愛娘よか、かつて愛したオンナのほうが大事だったってこった。」


「………穂積クンが、愛したオンナ…」





確かにあの案は鈴の出生や、その親であるタチバナの価値を織りこんだ上での『話題性』だ。


商品価値があると分かればマスコミは根掘り葉掘り調べてくるだろう。





「オッサンは自分がなーんもしてこなかったのをちゃんと自覚してんだ。なんもしてこなかったオヤジに代わって鈴をちゃんと育て上げたのがオマエのオフクロさんだってのもな。」




鈴の母親は一般人だからどうしても“名の知れた父親”の方が強く取りあげられるだろう。




「そこちゃんと分かってて今更何食わぬ顔でオマエの父親面なんかできねぇんじゃねーの?」




鈴のオカンのコトを考えれば、そんなこと出来るはずもない。


それに…

今更過去をほじくり返されて、イイ気分になれないのは俺自身も身にしみている。



鈴の母親は会社でそれなりの地位があって、今更タチバナとの関係をとやかく騒ぎたてられて、迷惑はあったところでメリットなど一つもナイ。



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