ツラの皮
「本当はもっと早く連絡したかったのに、高遠が拗ねてる間はダメだって麻生さんに止められたんだから。……もうどーしてイイか分かんなくて。なのに…」
らしくもなく気弱な声で言って、背中に回る手にさらに力を込めた。
俺は謝る代わりに腕にさらに力を込めて抱きしめ返した。
悪ぃ、ゴメン。
目先の嫉妬に囚われて、一番大事なトコロを見過ごした。
コイツの悩みや不安を一緒に解決すべきだったのに、言い訳の余地も与えずに勝手にキレて切り上げた。
その上、鈴に全面の責任を押し付けるだけして拗ねて、コッチから歩み寄ろうともしなかった。
悠長に構えている場合じゃないと知っていた麻生が、それでも時間を取ったのはヤッパリ必然だったんだろう。
俺の頭が冷えるまで。
大事なのは一瞬に熱くなれる瞬発力
―――と同時に
常に周囲の状況の読める冷静さ、だ。