ツラの皮



黙り込む私に構わず、ドア越しの声は話し出す。




「手のかかる部下…ってのがオマエの最初の評価だな。よく笑って怒って、しょぼくれて。感情が顔に出るわ口に出るわ。俺が感情を表に出さないタイプだから、そんなトコロに惹かれた。」


「…勝手に惹かれないでください。」



迷惑だとはこの際言えないけど、困る。
マジで。


私の憎まれ口に扉の向こうで小さく笑う気配がした。




「最初は、オマエに惹かれていると分かっていても、どうするつもりもなかった。多分俺は人生全般において淡泊で、行動の基準は、どうするのが一番有効かって事に尽きる。だから幼馴染が行動するならともかく、そうでないのならユリカと結婚しようと、本気で考えてたしな。」



ユリカさんとの結婚は部長にとって悪くない条件だったから。


部長の話を聞いていると、お見合いを破談に持ち込んだ本当の目的は幼馴染二人の為というより、私の為、とか……



意外に熱い部長の想いに今更ながらにかぁっと顔が火照る。



いや、でも、よろめくかと言えばまた別で。

甚だ困る。



あぁ、こんな事になるならいっそ流れ通りユリカさんと平平凡凡に幸せな家庭築いてくれちゃった方がヨカッタのに!!

…と思う私はオ二だろうか。






大体なんだって部長は淡泊人生を捨てていきなり熱男に豹変しちゃったワケ……???

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