ツラの皮
感慨深げに現場を眺めていると、雪乃が顔を戻した。
「撮影が終わったら毎日高遠に会えなくなっちゃう。…ねぇ、これからも仕事じゃなくて会ってホシイの。」
「無理。」
「どうしても?」
「どーしても。」
頑是ない子供を窘める大人みたいにやれやれと肩を竦める雪乃に、俺の方こそ溜息を吐きたい。
そろそろマジで諦めてくれ。
「一体、何で俺に固執すんだ。」
ハッキリ言えないが、雪乃のアプローチには僅かに違和感を覚える。
好きとは言うが、どこか本気を感じない。
それなのに俺に執着するその意味が理解しかねる。
「オマエ、俺のコト好きなわけじゃねぇよな。」
「好きよ?」
「恋愛じゃねぇだろ。」
「私には高遠が必要なの。それじゃダメ?」
“好き”じゃなくて“必要”?
なんなんだそりゃ……
俺の疑問に雪乃はいきなり突拍子もない返事を返してきた。