ツラの皮
「私、この現場が終わったら、少し仕事をセーブしようかなって思ってたんだぁ。」
…は?
「女優を辞めんのか?オマエみたいな女優の塊が?」
驚いてそう聞き返せば、雪乃は嬉しそうに顔をほころばせた。
「やっぱり高遠は私のコトを知ってるんだね。」
は?
知ってる?
…いや、話が全然見えねぇんだけど。
ふふっと雪乃は笑った。
「う~ん…仕事を辞めるか分からないけど、デビューしてここまで私なりに全力で女優を演じてきたから、もうぼちぼちでイイかなって。それでこれからは『菅原雪乃』の人生を充実させようかなって思ったんだけど……」
―――菅原雪乃ってどんな人物なんだろう、て。
無邪気な顔を緩く傾けてそう言った雪乃に暫く言葉が出なかった。
「私昔からずっと何かを演じてきたんだよね―――」