ツラの皮




「……寂しいヤツだな。」




思わず本音がポロリと落ちた。


それを聞いた雪乃は悲しそうな顔をするワケでもなく寧ろ嬉しそうに目を煌めかせた。




「ほらね。高遠は私のコト私よりも知ってる。…そうかぁ、『菅原雪乃は寂しいヤツ』、なんだね。」


「いや、ちょっと待て。なんでそうなる。」


「だって高遠だけだもの。『雪乃らしいよな』って、よく言ってくれたでしょう?高遠は誰よりも、私よりも、『菅原雪乃』を知ってるの。」




―――雪乃らしい…


その言葉にかつて付き合っていた当時の情景が浮かんできて胸がシクリと痛んだ。




身体を重ねた後の朝、料理なんてしたこともないくせにガンバって作ろうとして案の定失敗して『ごめんね』と首を竦めた姿とか…


監督の駄目だし連発に腐る俺を能天気な言葉で慰める時、とか…




雪乃らしい

…俺は何度その言葉を吐いただろう。




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