ツラの皮



会社絡みのお偉いさん達が集まるパーティーでそんな発表をされたら、覆すにしても更に大きな労力を伴う。


下手をしたらそのままずるずると結婚させられかねない。




『ど、どどどうしよう…とりあえず今はトイレに籠城してんだけど。見張りがいて、時間になったら力付くで会場に連れてくって…!』


「とりあえず今すぐソッチ向かう!オマエは俺が行くまでソコから出ンな!!」




頼りなげに「分かった」と応えるのを確認して、俺は電話を切った。


あーくそっ!!

だからそんなもんにホイホイ着いてくなって言ったんだよ。アホ鈴!!




「今の鈴さん?なんかあったの?大変そーだね。」



雪乃がけろっとした顔で歯噛みする俺を覗きこんできた。


この場に一番相応しいだろうセリフを言ったつもりだろうが、全く心が伴ってナイ。


…ああ、そうなんだろうな。


ここで俺が『雪乃は困ってる人をほっとけない優しいヤツ』だとでも言えば…望めば、コイツは全力で女トモダチの身を案じて悲嘆に暮れる姿を見せるのだろう。




だけど誰も『菅原雪乃』にそんな設定を設けないから、演りようがないのだ。


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