ツラの皮
「雪乃。オマエに女優じゃない『菅原雪乃』を演じさせてやる。オマエが望むなら多分、一生。」
「本当?」
「ああ。」
“この先のコト”を掻い摘んで話せば、「それ本当に大丈夫?」と言いながらも、雪乃の瞳は挑発的に煌めいていて。
与えられた役を十分に演じ切る気でいる女優の瞳。
それを見ていると本当に雪乃は俺を必要としていたけれど、恋愛感情じゃないというのが分かる。
惜しいわけじゃないがただ脱力。
最初っから最後までコイツの我儘に振りまわされっぱなしだな、おい。
ともかく時間がナイ。
「麻生っ!!」
「はぁ~い?」
他のスタッフ同様衣装を抱えて片付けに奮起していた麻生が、俺の呼びかけに顔を向ける。
「悪ぃっ。俺と雪乃と抜けっから、ここの後始末とコイツのマネージャーなんとかしといてくれ!!」
「は………はぁぁ!?」
らしくもなく素っ頓狂な声を上げた麻生を残し、俺は雪乃の腕を掴んで走り出した。
―――さぁ、勝負だ。