ツラの皮
トエルブ
≪side鈴≫
「いやっ!!放して!!行かないって言ってるでしょッ!!」
有言実行。
見張りは時間が来ると仕切り上部から個室の中へ入り込み、容易く鍵を開け私を引き摺りだした。
容赦ナシ!!
とうとう喚き散らす私の口を手で塞ぎ、ひょいっと小脇に抱えて歩き出した。
それは小荷物の運搬か、という冷徹ぶり。
やだ、このままじゃ会場に連れてかれる。
どうしよう……!!
「鈴を放せ!!」
へ!?
どかんと衝撃が加わって身体が放り出されたと思ったら、誰かの腕の中にいた。
「た、高遠……」
見上げれば、私を支えるのは高遠で。
仕事の途中だったのか、チノパンにTシャツというラフ過ぎる格好だけど、高遠の持ちうる美貌の所為か、こんな高級ホテルの通路にもまるで引け目ナイ。
相変わらず格好イイ男ね。
…って、今はそんなコトに感心してる場合じゃなく。
「えと…仕事大丈夫だった?」
このタイミングで助けられるなんて思わなくて、今更ながらの非常に微妙な質問をしていた。