ツラの皮
見張りの人が慇懃に目を尖らせる。
「他のお客様にはなるべく失礼のないよう言い渡されておりますが、婚約者を会場にお連れするのが私どもの役目ですので、邪魔伊達するなら御容赦いたしませんが。」
早くも臨戦態勢の見張り役に対し、高遠はふんっ、と鼻で笑った。
「それなら安心しろ。ヤツの婚約者ならもう会場にいる。」
………はい!?
思いがけない言葉に私は勿論、見張り役の人達も目を瞬いた。
確かめるという意味で私達は見張りさん達と共に会場に向かった。
灯りの落とされた大広間。
それ故、いかにも部外者な格好の高遠も特にとがめられずすんなり忍び込む事が出来たけれども。
暗いフロアの中一際眩いライトを浴びていかにも主役然と立っていたのは部長。
いや、この場合は宮武の御曹司と言うべきか。ともかく部長。
しかしその顔は鉄仮面ながらも茫然自失の体。
え?
あの部長から理性を剥ぎ取るなんて、何があったの?
天変地異みたいな出来事にちょっと驚きつつ、その横を見て私は更にビックラ仰天した。