ツラの皮



雪乃さんは自分らしくいるために高遠を所望していただけで、所詮恋じゃなかったんだって…。


ちょっと理解しかねる感覚だけど、部長に寄り添っていた姿を見ればその解釈は正しいのだろう。




彼女は、これから先の『菅原雪乃』という役を与えてくれる人を手に入れた。

旦那という形で。



でもだとしたら、温泉地で切なそうに高遠を見詰めていた雪乃さんも全部演技だったってコト!?


ついでに、高遠をよろめかせたい雪乃さんが、現場で私の演技をしていたとか。


多分、雪乃さんとお茶をした後辺りから…。


あの日、他愛無いよもやま話をしている間に私のしゃべり方とか表情とかチェックしてたんだ。


さすが演技派と言われる大女優……

侮れないわね、雪乃さん。




「しかしまさか高遠がここまでぶっ飛んだ賭けをしてくるとは思わなかったな。」


「さすがギャンブラー!!」



人事宜しくゲラゲラ笑う二人に私も激しく同感する。


よもや婚約発表に見ず知らずの女を代役に立てるとか…フツーじゃ考えつかないね。


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