ツラの皮
「鈴」
「ん」
カウンターに仰け反って、どうしてこんなに父親らしくないのかというふてぶてしい態度で穂積クンは私に笑いかける。
「ソイツは良いヤツか?」
私は正直に頷いた。
その後、混乱したままの自分の心から考え考え言葉を拾って告げた。
「お母さんの部下なの。誠実で、しっかりしてて、優しいお兄さんみたいな人。好きか嫌いかって聞かれたら勿論好き。……だけどこんな事態考えたこともなくて……正直、驚いた。」
ぷかっと煙草を吹かして穂積クンはにやっと笑った。
「鈴がイイなら俺は構わねーよ。オマエが振り回されとなると話は別かとちょっと思うわけだが。ま、コレでも一応オマエのオヤジだし?」
憎たらしい。
こんな時、限定でオヤジ面しないでよ。
勢いでぽろっと零れた涙を私はゴシゴシと力任せに拭った。