ツラの皮
「ゴメンね。結婚はボクの勇み足だった。あの後、祥子さんにはっきり断わられたよ。ボクと結婚する気はないって。」
え?
ワケが分からず見詰める聡クンの顔が苦笑に歪む。
「ボクのことはキライじゃないけど、結婚となると別問題だって。今のところ結婚は考えられないって、そう言ってたよ。」
母よ……またそんなことを。
呆れて溜息を吐いた私の耳に小さな独り言が飛び込んできた。
「祥子さんはまだ―――のことが好きなのかもしれない。」
驚いて顔を挙げると、聡クンはふっきったような清清しい笑顔で拳を固めて見せた。
「でもボクは諦めないよ。いつか祥子さんが振り向いてくれるまで頑張るから。……そしたらその時は鈴ちゃんも認めてくれるかな?」
私は大きく頷いた。
一般論から言えば、その笑顔が出来る聡クンのほうがどこぞのロクデナシオヤジよりずっと人間が出来てますから。
安心して下さい。