ツラの皮
首を傾げながらも、急かされて用意しておいた靴を履いて慌てて外へ出る。
「わー車だ!」
このあたりは渋滞が多くて、その代わりに公共交通手段が充実しているので、通勤なら断然後者の方が便利だ。
それで免許は取ったものの普段の足はもっぱら電車で、車など勿論持っていない。
かくいう高遠も同じで今日は友人から借りてきたそうだ。
運転は奴隷行使とばかりに私に任命された。
運転席に乗り込みながら「どこに行けばいいの?」と尋ねる。
「どこでもいい。お前が行きたいところへ行け。」
「はぁ?」
私は怪訝な顔でシートベルトを装着している高遠を覗き込む。