ツラの皮
「…………オマエってヤツはどこまで規格外だよ。」
あんなに念を押したにも関わらず、目的地を胡乱げに見詰めた高遠の開口一番がそれだった。
「だ、だから、聞いたんじゃない。そしたらいいよって言うからっ。」
競馬場を前に私は必死に言い訳を捲くし立てる。
「だって来てみたかったんだもん!穂積クンが馬はいいぞ~って常々言ってて。だけどさすがに一人じゃ来る勇気もないし。」
決してギャンブルが目的ではない……多分。
いいぞ~といわれるその雰囲気を体感してみたかっただけで。
居た堪れず、まだ見ぬ競馬にアレコレ熱い思いを語っていた私は、高遠が溜息と共に零した台詞に固まった。
「はぁ…どんだけ外してんだか。初デートで競馬場選ぶ女なんてハジメテ見たわ」