蜜恋の行方—上司と甘い恋をもう一度—


答えてからハっとする。
課長が朝ごはんを用意してくれる気でいるんだって気づいたから。

「あ、でも、私もう帰りますから!」
「でも、財布も定期も大島に持っていかれたんだろ?」
「あ……はい」
「大島には、さっき電話して吉野のカバン持ってくるように言ってあるから、急がなくてもいいだろ」
「え……あ、さっきの電話って……」

知美にかけてたって事?
それにしてはやけに仲よさそうに感じたけど、私の勘違いなのかな。
知美と課長は、同じ会社に勤めてるって事しか共通点はないハズだし……。

不思議に思いながら見ていると、目の前まで近寄った課長が微笑む。

「俺も朝はパン派なんだ。
近所においしいパン屋があるから、吉野も付き合ってくれない?」

優しい微笑み。
呼び方が“吉野”に戻っている事を寂しく思う気持ちを抑えて、困りながらも頷いた。



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