蜜恋の行方—上司と甘い恋をもう一度—
◇守りたい、誰か



知美の言葉のおかげで、少しだけ頑張ってみようって気持ちは翌日もそのまま保たれていた。
私の事だから時間がたったらまたそんな勇気なくなっちゃうんじゃないかなって不安だったけど、そんな事はなくて。

課長の事は私のなかで特別なんだと改めて自覚する。

そこまで特別な人にぶつかるチャンスがあるんだから頑張ろう。

そんな意気込みを持ちながら乗り込んだエレベーター。
ドアが半分閉まりかけた時、勢いよく走ってくる安部先輩の姿が見えて慌てて「開」のボタンを押した。

「吉野! ちゃんと課長の家にお見舞い持ってたでしょうね?」

おはようの挨拶でもなく、エレベーターを止めておいたお礼でもなく、安部先輩が一番に言ったのは課長の事だった。

息を切らせながらすごい剣幕で詰め寄ってきた先輩に、たじろぎながら頷く。



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