蜜恋の行方—上司と甘い恋をもう一度—
「なに?」
「もし、都合がよければ今日、19時半にきてください」
カードを受け取った課長とは目を合わせないで、それだけ言って横を通り抜ける。
カードには地図もあったし、お店のサイトアドレスも載っていたから、これできちんと誘った事にはなるし、来なかったらそれはそれで仕方ないと先輩も納得してくれるハズ。
大きな仕事を終えて、はぁとため息を落とす。
それから、さっきの課長の顔を思い出した。
私を見て驚いたのは、ひどい顔をしていたからなのか、それとも、私が身体をすくませたからなのか。
よく分からないけど、それにしても何かあったのかを聞くなんて、課長らしくない。
自分が冷たくしているから私が落ち込んでいるって、勘のいい課長が気づいていないとは思えない。
その上で言ったなら、デリカシーがなさすぎる。
それでも……それでも、あんなちょっとの会話が嬉しいなんて。
どうかしてる。
ドキドキしている胸を抑えながら、階段途中でしゃがみ込んだ。
こんなに好きだなんて……どうかしてる。