蜜恋の行方—上司と甘い恋をもう一度—
「あの、場所移す?」
こんな場所じゃ誰に聞かれるか分からないからそう提案したけど、松浦はここでいいと言った。
中は騒いでるから聞こえないし、ふたりきりになって私を怖がらせたくないからって。
それを言われた時点でなんとなく話の内容が分かった気がして、余計に緊張が増す。
もしかしたら、松浦はまだ私の事……。
そんな風に思ったからだけど、松浦が言った言葉は違うものだった。
「吉野の忘れられないやつって……課長?」
「……え」
驚いて何も答えられずにいる私を、松浦がじっと見つめる。
「なんか、吉野ずっと見てたらそう思えてきて……。
同じ大学だとか言うし、ありえなくない気がしたんだけど、違う?」
咄嗟に「違うよ」とだけ言ったけど、松浦は信じていないみたいで。
私を見つめたままの松浦に、すぐにうまい嘘が思いつかなくて目を逸らす事しかできなかった。