蜜恋の行方—上司と甘い恋をもう一度—


真剣な顔で言われて戸惑ったハズなのに。
アルコールの回った頭は制御不能で、考える間もなく率直な気持ちを声にしていた。

「それももちろんあるけど、それだけだったら部屋になんか上げないだろ。
送り届けて帰ってくればいい話だし」

そこで一度切った課長が、困り顔で微笑む。

「そろそろ大人しく乗ってくれないと、変質者が女を連れ込もうとしてるって通報されそうなんだけど」

確かに騒ぎすぎた自覚はあったから、言われた通りエレベーターに乗り込む。
エレベーターに乗っている間も、部屋に入るまでも、課長はずっと私の腕を掴んでいて。
まるで逃げ出さないようにしているみたいに思えて、勘違いだと分かっても嬉しかった。

「すみません、何度もお邪魔しちゃって……。
課長、他人を部屋に上げたりするの、あまり好きじゃないのに」

足元はふらふらしていたけど、気持ち悪いだとかろれつが回らないとかはなく、思考回路もまぁまぁ無事だった。




< 168 / 225 >

この作品をシェア

pagetop