蜜恋の行方—上司と甘い恋をもう一度—
「おまえ、朝帰りまでしといて何言って……ああ、縁談の件?」
「うん。縁談まとまったって言ってたし、女の人と一緒にいたところを見た人もいるし。
昨日の夜も……私が頼んだから一緒にいてくれただけなの」
「それさぁ、課長とちゃんと話したのか?」
「話って何の?」
しびれを切らした感じの松浦が、顔をしかめたまま続ける。
「縁談の事とかデート現場とか、俺も聞いたけど噂だろ?」
「けど、課長は縁談がまとまったって噂が流れた日から私に急に冷たくなったんだよ。
縁談の噂が本当だって考えれば冷たくなったのだって説明がつくし……」
「デート現場見たやつは何人かいるしそれは本当だと俺も思う。縁談の話も、あれだけ噂になってると事実かと思ってたけど……。
でも、吉野の話聞いて違う気がしてきた」
アパートの前は車がぎりぎりすれ違えるくらいの細い道でいつもは車の通りも人通りもあまりないけど、10時が近づいてきたからか、さっきよりも少し通りが多くなる。
高い位置まで昇った太陽が、伸びていた影を短くしていく。
「どういう意味?」と聞くと、松浦は「だって考えてみろよ」とすぐさま答えた。