蜜恋の行方—上司と甘い恋をもう一度—


一夜だけ。そう決めてたから。
縁談のまとまった課長に迷惑はかけないって、決めてたから。
だから、それだけ残して何も言わずに課長の前から姿を消した。

課長の未来を考えたら私の存在は邪魔だと思ったから。
つらくてつらくて苦しかったけど、課長を好きだからこそ部屋を出たのに。

なのに、なんで課長は今ここにいるの……?

「言葉の通りです。
縁談がまとまったって……恋人ができたって噂で聞いたから」
「恋人?」
「日曜日、キレイな人と歩いてたって。
見た人が何人かいて、会社中の噂になってます。
知らなかったんですか?」

驚いた様子の課長に聞くと、顔をしかめられる。

「ああ、そういえば週明けにそんな事直接聞いてきたヤツがいたな。
確かに日曜日は縁談相手と一緒だったから特に否定はしなかったけど……。
吉野の耳に入るほど噂になってるとは思わなかった」

知っていたし、覚悟だってしていたのに。
課長の口から直接聞くとショックを隠せなかった。



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