蜜恋の行方—上司と甘い恋をもう一度—
◇名前を呼んで



「噂、だいぶ落ち着いてきたろ」

課長の縁談の噂が流れ始めて約二週間。
課長の言うとおり、縁談の噂はかなり下火になってきていた。

「はい。……でも、否定しなくていいんですか?
多分みんな、そのうち課長が結婚すると思い込んでますけど」

片側二車線の道路を走る車のヘッドライトが途切れる事なく続く。
いつもならオフィス街なだけあって通勤も帰宅も人が多いけれど、22時を回ったからか歩行者は少なかった。

「ああ、放っておけばいいよ。
笹川専務の名前つきの縁談の噂があれば言い寄ってくる女子社員もいないだろうし、丁度いい」
「それはそうですけど……やっぱり言い寄られたりしてたんですか?」

毎週のように行われていた、トイレでの課長争奪戦を目の当たりにしていれば予想もつくけれど。

「まぁ、そんなに多くないけどね」
「嘘ばっかり」






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