蜜恋の行方—上司と甘い恋をもう一度—
「吉野」
後ろから声をかけられて、びくっと肩を揺らす。
びっくりしたからじゃない。
その人の声に、身体が勝手に反応したからだ。
「……はい」
変に思われないように、平常心を意識してから振り返って返事をする。
小さな抵抗で、目は伏せていたけれど。
なかなか話し出さないから、不思議に思ってそっと視線を上げた。
「この資料、よくできてた」
「あ……、ありがとうございます」
「次もまた頼むな」
「はい」
優しい笑顔に嬉しくなって、資料を受け取る。
けど。
受け取ろうとした瞬間、手首を掴まれて引っ張られた。
そして。
「17時に、第三会議室で待ってる」
耳元でささやかれる、悪魔の呟き。
顔をしかめて見上げる私を見て、課長が優しくもいじわるに微笑んだ。