蜜恋の行方—上司と甘い恋をもう一度—
限界だった。
これ以上見つめられたら……、一緒にいたら。
緊張でどうにかなりそうだったから。
男の人が苦手なのは嘘じゃない。
一人っ子だし女子高だったし、今まで特別親しくなった男の人もいない。
だから、こっそり憧れて見ていた先輩とあんな風に話すとか……、私にはハードルが高すぎて。
見ているだけで満足だった芸能人とバッタリ会ってしまったような感じで、戸惑う事しかできなかった。
図書館に逃げ込むように入って、さっきの続きをしようと図鑑の置いてある本棚の前に立つ。
私は、見てるだけでいい。
見てるだけで満足なんだから。
『藤堂先輩と話しちゃった……』
そう漏らしてから藤堂先輩に触られた髪を見つめて、熱くなった顔を両手で覆った。
多分、あれが私の人生至上最大のハプニングだと確信しながら。