蜜恋の行方—上司と甘い恋をもう一度—
お店に入る前、絶対に割り勘でっていう約束をしたのに、課長は私がトイレに行っている間に会計を済ますという漫画みたいな事を普通にやってのけてしまって。
お店を出た後も払おうとしたのに、がんとして受け取ってくれなかった。
だからもう一度釘を刺しておくと、課長は困ったように笑う。
「でも、俺も一応役職ついてるわけだし、第一男だし。
これから色んなところに出かけるだろうから全部は無理だとしても、飯くらいは出したいと思うんだけど……。
そんなに奢られるのが嫌か?」
「嫌っていうか……悪いと思っちゃって」
歯切れ悪く答えると、課長は「じゃあ、こういうのは?」と提案する。
「外食しない時は、優花が何か作るとか」
「え……そんなのは全然いいですけど、でもそれだけだとやっぱり課長に負担かけちゃいますし」
「だから、そのくらいは彼氏の特権って事にしてくれない?」
彼氏。
そう言われちゃうと何も言えなくて。
まだ慣れない、恋人って関係に嬉しくなりながら頷いた。
「でも、あまり会社の近くで会うのは控えた方がよくないですか?」