蜜恋の行方—上司と甘い恋をもう一度—
課長の言葉に、安部先輩がピタっと止まる。
それを不思議に思って聞いた課長に、安部先輩はしばらく課長を呆然と見た後ようやく口を開いた。
「課長……もしかして彼女がいるんですか?」
「ああ、いるけど」
「……私、お昼に行ってきます」
意気消沈して部屋を出ていく安部先輩の背中に慌てて「行ってらっしゃい」と声をかけたけど、返事はなかった。
「気になるなら、安部には俺から気に入りそうな男紹介しておくよ」
小声で言われて振り向くと優しく微笑まれる。
思ってもしょうがない事だけど、悪い事しちゃったかな、なんて考えた私の心を見透かしたようなタイミングに苦笑いがこぼれた。
「安部先輩に合いそうな人がいたらぜひお願いします」
「ああ。それとこの資料、よくできてたよ」
「あ、ありがとうございます」
差し出された資料を受け取ろうとして、手首を掴まれて軽く引かれる。
近づいた瞬間に「20時に、俺の部屋で」と囁かれて……。
返事をする間もなく資料を渡されて、それと一緒に渡されたモノに驚いた。
顔を上げると、課長はすでに背中を向けてデスクに向かっていて。
半分だけ振り返った課長が優しく笑う。