蜜恋の行方—上司と甘い恋をもう一度—


「―――化粧直し、終わった?」

課長にキスされた後、逃げ出すみたいに会議室を出て飛び込んだトイレ。

鏡の前で気持ちを落ち着かせてから出ると、壁に背中を預けてこっちを見ている課長に声をかけられた。

「な、なんで……っ。
失礼です! トイレの前で待ってるなんて!」
「吉野が逃げるからだろ。
話が終わってないのに」
「それは……、課長があんな事するからじゃないですか」

呼び方が“吉野”に戻ってる事に気付いて、複雑な気持ちになる。
本当だったら安心だけを感じなくちゃいけないのに……。
ショックを受けてるのも事実だった。

課長の事になるとわがままになるところは、四年前から変わらない。
恋を知った、あの頃から。


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